「お伊勢さん」として親しまれている伊勢神宮は、日本全国の神社の総親神として本宗と仰がれる神社で、内宮(皇大神宮)と外宮(豊受大神宮)の2つの正宮からなります。内宮には日本民族の総氏神であり太陽を神格化した天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、一方の外宮には食物や産業を司る豊受大神(トヨウケノオオカミ)が祀られています。
江戸時代には「一生に一度はお伊勢参り」と言われました。自由に旅行ができない時代、お伊勢参りを通して日本人は旅を経験したのです。伊勢神宮は神聖な場所であると同時に魅力的な観光名所でもありました。
面白いことに、伊勢神宮は伊弉諾神宮の真東に位置しています。伊弉諾神宮はアマテラスの父にあたるイザナギ神を祀った神社。そこから太陽の昇る東の方角に、太陽神アマテラスを祀る伊勢神宮がある訳です。これは偶然でしょうか?日本神話の世界と共に、伊勢神宮を紹介しましょう。

写真

アマテラス誕生

国生みを終え、黄泉の国(死者の世界)のイザナミ神に永遠の別れを告げたイザナギ神は、黄泉の国の汚れを清めようと川に身を浸しました。そして左の眼を洗うとアマテラス神が、右の眼を洗うとツクヨミ神が、鼻を洗うとスサノオ神が生まれました。イザナギ神はこの三貴子の誕生をたいそう喜びました。アマテラス神は太陽の神様、ツクヨミ神は夜を統治する月の神様、スサノオ神は地上や海原を統治する神様です。

ところが、スサノオ神は母に会いに黄泉の国に行くといって泣き止みません。とうとうイザナギ神はスサノオ神の追放を決意しました。追放されたスサノオ神は、姉のアマテラス神に挨拶しようと天に昇りますが、そこで乱暴狼藉を働いてしまいます。最初は弟を庇っていたアマテラス神でしたが、あまりの恐怖に天の岩屋に閉じこもってしまい、天も地上も何もかも真っ暗になってしまいました。

困った神々は天安河原に集まり、アマテラス神を天の岩屋から出す方法を相談しました。まず朝が来たかのように鳥を鳴かせ、天の岩屋の前で女神が音楽に合わせて踊り、八百万の神々がいっせいに笑いました。アマテラス神は「一体何の騒ぎだろう」と不思議に思い、天の岩屋の戸を少し開きました。踊っていた女神が「あなたより尊い神がおいでになったので、皆で祝っています」と答えながら、あらかじめ作っておいた八咫鏡を差し出します。アマテラス神が鏡をのぞきこもうとさらに戸を開けた瞬間、脇に隠れていた神がアマテラス神の手をとって引っ張り出しました。

こうして世界は再び光明を取り戻し、スサノオ神は高天原(天界)から永久追放となってしまいました。

オススメ

伊勢神宮 外宮
伊勢神宮は大きく内宮と外宮からなっており、古来、外宮から内宮に参るのが正式とされています。食物や産業を司る豊受大神が祀られ、豊受大神宮とも呼ばれます。雄略天皇の夢にアマテラスが現れ、「自分一人では食事が安らかにできないので、豊受大神を呼び寄せなさい」と告げたと言われています。内宮から5km程離れた場所にあります。

伊勢神宮 内宮
皇大神宮とも呼ばれ、天照大御神が祀られています。「八咫鏡」をご神体としますが、これは天の岩戸に隠れてしまったアマテラス神を誘い出すのに使われた鏡です。天の岩戸隠れのずっと後、アマテラス神が自身の孫を地上に派遣する際に、自分の御魂として鏡を孫に託しました。合わせて稲の種を渡し、米をつくる暮らしがこの国の繁栄と平和をもたらすと教えたと言われています。

おはらい町、おかげ横丁
内宮の宇治橋に続く通りがおはらい町です。土産物屋や飲食店が軒を連ね、参拝後の食べ歩きがとても楽しいです。おかげ横丁はおはらい町の中ほどに位置し、お伊勢参りで賑わった江戸から明治時代の町並みが再現されています。
地元のソウルフードとして愛されているのが伊勢うどん。一般的なうどんとは別物で、柔らかいうどんを、たまり醤油に出汁を加えた黒いたれにつけて頂きます。後、有名な赤福の本店もここにあります。

鳥羽、志摩
時間に余裕のある方は、車を借りて鳥羽や志摩方面にドライブに出かけるのもいいでしょう。内宮から鳥羽市内に通じる伊勢志摩スカイライン、そして鳥羽市と志摩市の海岸沿いを走るパールロードはドライブに最適です。私は志摩にある横山展望台まで足を運び、英虞湾の独特な景観を楽しんできました。多くの小島や半島で入り組んだ湾で、真珠の養殖でも有名です。

アクセス

最寄駅は伊勢市駅となり、近鉄を利用するのが便利です。京都、大阪からだと約2時間、名古屋からだと1時間半程度でアクセス可能です。
伊勢市駅から外宮までは歩いて5分程度です。内宮は外宮から5km程離れた場所にあるため、外宮参拝後、バスに乗るのがいいでしょう。

旅のルート

京都、大阪、名古屋からアクセスする場合、下記のようなプランになると思います。日帰りも可能ですが、時間のある方は宿泊して鳥羽、志摩方面へ海を見に行ってはいかがでしょうか?景色はきれいですし、海の幸も美味しいです。いくつかリゾートホテルもあるので、そちらに滞在するのもオススメです。

 日 移動 観光 宿泊
1 京都/大阪/名古屋→伊勢市(近鉄) 伊勢神宮
おはらい町
おかげ横丁
伊勢
2 伊勢、鳥羽、志摩周遊(車) 鳥羽湾
英虞湾
伊勢/鳥羽/志摩
3 伊勢市→京都/大阪/名古屋(近鉄)
京都/大阪/名古屋→各地(鉄道/バス/飛行機)