瀬戸内海に浮かぶ淡路島。古事記や日本書紀にまとめられた日本神話の中で、神々が日本列島を誕生させる際に最初に生み出した島として描かれています。現在はたまねぎの産地として有名ですが、古代より御食国(みけつくに)と呼ばれ、多くの食材を朝廷に納めてきた歴史も持っています。

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日本神話の世界

日本神話には八百万の神が登場し、実に人間くさい物語が展開します。大きな力で日本列島や神々を生み出したかと思えば、当然のごとく男女の関係を結び、恐怖で洞窟に閉じこもり、時には他の神を殺してしまいます。決して完璧な存在ではありません。しかし、こういった不完全な神々と共生してきたからこそ、日本人は外国の文化や宗教にも寛容でいられ、ユニークな文化を作り上げてきたような気がします。日本神話と共に日本各地を紹介してみたいと思います。

国生み神話

はるか遠い昔、世界はまだ天地の区別さえもなく、混沌としていました。ようやく天と地が分かれると天は高天原(たかまのはら)となり、そこに神々が生まれます。男女ペアの神、イザナギ神イザナミ神もそうして生まれた神様でした。
「まだ海にふわふわ漂っているだけの日本国をしっかり造り固めなさい。」そう命をうけたイザナギ神とイザナミ神は下界を矛でかき混ぜて引き上げました。すると矛先からしずくがしたたり落ちて固まり、小さな島ができました。オノゴロ島の誕生です。
2神はオノゴロ島に降り立ち、天の御柱を立てて御殿を築き、夫婦の契りを交わします。すると淡路島が生まれました。続いて四国、隠岐諸島、九州、壱岐、対馬、佐渡、本州と生み、8つの島からなる大八島国(おおやしまのくに)が誕生しました。

オススメ

伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)
大八島国に続き、多くの神々を生み出し、仕事を終えたイザナギ神は、淡路の多賀の地に幽宮(かくりのみや)を構えて隠れます。この幽宮の地を聖地として創始されたのが伊弉諾神宮です。日本最古の神社とも言われ、本殿はイザナギ神の神陵の真上に建てられているとか。
毎年9月にはここで三大神話神楽祭が開催され、神話ゆかりの出雲、高千穂、淡路の神楽が一堂に会します。

自凝島神社(おのころじまじんじゃ)
古来より「おのころ島」と呼ばれ、イザナギ神とイザナミ神が初めて造ったオノゴロ島の候補地として伝えられています。小高い丘の上に神社が建っていて、昔は海に浮かぶ小島だったとか。境内には、2神が夫婦の道を開かれたという「せきれい石」があり、近年は縁結びの神社として人気があります。

沼島(ぬしま)
沼島は淡路島のすぐ南に浮かぶ島で、オノゴロ島の最有力候補とされています。島のシンボルである上立神岩は、イザナギ神とイザナミ神が婚姻を行った「天の御柱」とも言われています。又、小高い山の上にはおのころ神社と呼ばれる神社が静かにたたずみ、山自体が神体山として崇敬されています。
※ちなみに宮崎県等にもオノゴロ島候補と言われる地があります。ただ、オノゴロ島は淡路島から見えたという歌が残っており、淡路島周辺の可能性が高そうです。(参考:すぐわかる日本の神社―『古事記』『日本書紀』で読み解く)。

海水浴、温泉
島には多くの海水浴場があり、夏には多くの人で賑わいます。宿泊地や観光ポイントに合わせ、アクセスしやすい所を選ばれると良いでしょう。下の写真は洲本近くの大浜海水浴場沼島海水浴場です。
又、島には日帰り入浴施設がいくつかあります。美湯松帆の郷パルシェ香りの湯さんゆー館など。島に点在する温泉宿に宿泊するのもいいでしょう。
Ohama Beach Nushima Beach

季節の花
一年中花が楽しめる公園があわじ花さじきです。他にも梅や桜が美しいスポットが島の各地にありますが、冬に淡路島に来られる方には灘黒岩水仙郷をオススメします。水仙の日本三大群生地の1つで、青い海をバックに小さな黄色い花が咲き乱れ、淡路島の冬の風物詩と言えるでしょう。又、初夏であればあわじ花の歳時記園。3,000坪の広大な敷地に70種類、3,500株ものアジサイが咲き乱れます。
Narcissus Hydrangea

淡路島の食材
古くから御食国(みけつくに)と呼ばれるくらい食材が豊富な島なので、是非味わってみて下さい。あまり知られていませんが、淡路ビーフは日本で有数の高級和牛です。ありい亭は、私が焼肉を食べたくなったら通うお店です。ちょっと場所が分かりにくいですが、民家のようなお店で自家牧場で育てられた淡路牛をリーズナブルに頂けます。
海鮮ももちろん美味。寿司屋&魚屋の林屋平松食堂はオススメです。林屋さんはテイクアウト用に刺身の盛り合わせも作ってくれますし、平松食堂にはその日一番の魚を食べさせてくれる「おさかな定食」があります。タイミングが合えば、平松食堂そばの港で月に1度開催されるうずしお朝市も楽しいです。
又、観光中に休憩したくなったらカフェを見つけるとよいでしょう。淡路島は野菜もとても美味しく、農Cafe八十八屋では島でとれた野菜料理が食べられます。他にもハワイ料理のKumi’s Kitchen、海沿いのMieleCappuccinoなど、特徴あるお店がたくさんあります。島を一周するといろんなお店が見つかると思うので、是非お気に入りの店を探してみて下さい。

アクセス

島内の移動も考えると、神戸(新神戸駅や三宮駅)や大阪(関西国際空港、新大阪駅、大阪駅)でレンタカーするのをオススメします。淡路島まで神戸から1時間、大阪から1.5時間程度です。
バスでアクセスする場合は、新神戸駅、三宮駅、そして明石海峡大橋近くの舞子駅が便利です。淡路島の津名港バスターミナルや洲本バスターミナルに入ることになるでしょう。淡路交通神姫バス本四海峡バスなど。淡路島と関西国際空港を結ぶ便もあります。
島内には路線バスがありますが、本数は多くありません。伊弉諾神宮に行く際は伊弉諾神宮前、自凝島神社に行く際には榎列が最寄のバス停となります。沼島へは土生港か洲本港からで行けます。土生港からだと約10分、洲本港からだと約60分の距離ですが、洲本港の便は数が少ないので土生港から船に乗る方がいいと思います。

旅のルート

現在淡路島に住んでいる身として、京都を観光後、淡路島に寄って帰るプランを考えてみました。1日あれば島を一周できるので、神社だけでなく、海や温泉に入ったり、島の美味しい食材を食べて帰ると充実した旅になるでしょう。もう1日余裕があれば、是非沼島にも足を伸ばしてみて下さい。
島にはリゾートホテルもあれば、温泉宿、ペンション、民宿もあるので、好みの宿が見つかると思います。

 日 移動 観光 宿泊
1 京都→三ノ宮(JR)
三ノ宮→淡路島(車)
あわじ花さじき 淡路島
2 淡路島周遊(車) 伊弉諾神宮
自凝島神社
海水浴、温泉
淡路島
3 淡路島→沼島(車、船)
沼島→淡路島(船、車)
上立神岩
おのころ神社
淡路島
4 淡路島→三ノ宮(車)
三ノ宮→各地(鉄道/バス/飛行機)

国生みの後

国生みを終えた2神は、続いて多くの神々を生み出しました。海の神、風の神、山の神、食物の神…。何もなかった日本の島々はどんどん豊かになっていきます。しかし、最後に火の神を生んだ時にイザナミ神は火傷を負い、亡くなってしまいました。

イザナギ神は悲しみ、妻に会いたい気持ちをどうしても抑えきれず、死者の世界である黄泉の国へ向かいました。しかし、そこにいたのは変わり果てた姿のイザナミ神だったのです。あまりの驚きにイザナギ神は逃げ出しました。姿を見られたイザナミ神はその後を追いかけますが、イザナギ神は黄泉の国と現世の境界を大きな岩でふさぎ、何とか現世に戻りました。黄泉の国との行き来ができなくなる、これは夫婦の永遠の別れも意味します。岩を境に、2神はこんな会話をしたといいます。

イザナミ 「いとしい夫よ。あなたがこんなことをするのなら、わたしはあなたの国の人を一日千人、殺しましょう。」

イザナギ 「いとしい妻よ。あなたが千人殺すなら、わたしは一日に千五百の産屋を建てよう。」

こうして死んだ以上の人間がこの世に生まれてくることになりました。