「高千穂」は日本神話の中で天孫が地上に降臨した地とされており、2つの伝承地があります。1つは宮崎県北部にある高千穂町、もう1つは宮崎県と鹿児島県の県境にある霧島連山(高千穂峰)です。前者の高千穂町は高千穂峡という美しい渓谷が有名で、高千穂神社や槵觸神社が神話の世界を伝えています。一方の高千穂峰は、霧島連山を見渡す山頂に天孫が突き立てたという天の逆鉾があり、麓には霧島神宮が鎮座しています。共に風光明媚な場所で、観光地としても人気です。
例によって太陽の動きを通して他の古い神社とつながっており、淡路島の伊弉諾神宮から見ると、高千穂神社は冬至に太陽が沈む南西の方角に鎮座しています。

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天孫降臨神話

出雲での国譲りにより、地上世界(葦原中国)は天界(高天原)のアマテラス神に統治されることになりました。アマテラス神は孫のニニギ神に降臨の命を下します。ニニギ神が天界と地上の分かれ道まできた時、サルタヒコ神が現れて道案内を買って出ました。ニニギ神はサルタヒコ神を共に加え、他の神々と共に「筑紫の日向の高千穂のくじふるだけ」に降臨しました。そしてニニギ神はアマテラス神から預かった稲を地上にもたらしたと言われています。
ある日のこと、ニニギ神は笠沙の岬で美しい乙女に出会いました。名はコノハナノサクヤビメ。ニニギ神は乙女の父親オオヤマツミ神に使いを出し、結婚を申し込みました。父神は大いに喜び、コノハナノサクヤビメの姉、イワナガヒメまで差し出します。ところが、姉のイワナガヒメは大変醜かったので送り返し、ニニギ神はコノハナノサクヤビメとだけ一夜の契りを交わしました。父神は深く悲しみます。二人の娘を差し出したのには理由があったのです。姉のイワナガヒメは石のように永遠なる繁栄を、妹のコノハナノサクヤビメは花のような繁栄を意味していたのです。以降、姉を送り返してしまったニニギ神とその子孫の寿命は花のように限りあるものとなりました。
コノハナノサクヤビメは妊娠しました。しかし、たった一夜で身ごもったためにニニギ神は自分の子かどうか疑ってしまいます。コノハナノサクヤビメは「天孫の子供ならば無事に生まれるはずだ」と言って産屋に火をかけて出産にのぞみ、燃えさかる炎の中、3人の子(ホデリ神、ホスセリ神、ホオリ神)を生みました。ホオリ神、後に神武天皇の祖父となる神の誕生です。

高千穂町のオススメ

高千穂峡
高千穂峡は高千穂町観光のハイライト。是非、貸しボートに乗ってみてください。美しい峡谷を満喫しながら高千穂峡のシンボル「真名井の滝」のすぐそばまで近づくことができ、とても気持ちいいです。周辺には遊歩道も整備されており、高千穂峡や神話ゆかりのスポットを見て周ることができます。さらに20分程山道を歩けば高千穂神社なので、ちょっとしたハイキングを楽しみたい方にオススメです。
高千穂峡2 高千穂峡3

高千穂神社
高千穂神社は高千穂郷八十八社の総社として古くから信仰を集めてきた神社です。祭神は高千穂皇神と十社大明神。高千穂皇神とはニニギ神夫婦、息子のホオリ神夫婦、さらにその息子夫婦の6神のことで、日向三代とも呼ばれます。近くには高千穂峡国見が丘という雲海の名所があり、美しく神秘的な景観でも有名です。

槵觸神社
槵觸神社は天孫降臨の地と伝えられる槵觸の峯に鎮座しています。古くは槵觸の峯そのものをご神体としていましたが、現在は本殿が築かれ、ニニギ神を主祭神として祀っています。周辺には神話史跡を巡る遊歩道が整備されており、降臨した神々が高天原を遥拝したという高天原遥拝所などがあります。

天岩戸神社
天岩戸神社アマテラス神が隠れた天岩戸をご神体とする神社です。本殿はなく、川を隔てた崖にある窟を拝する形になります。近くには、八百万の神がアマテラス神を天岩戸から出す方法を相談したと言われる天安河原もあります。天岩戸隠れは天界で起きた出来事ですが、高千穂では神話の世界と現実が交錯しています。

阿蘇
熊本空港から高千穂峡を目指す際、途中にある阿蘇も観光されてはいかがでしょうか。草千里ヶ浜で大草原を眺めたり、中岳火口で阿蘇の火山活動を見学したり、阿蘇ならではの雄大な景色があります。
草千里ヶ浜 中岳火口

高千穂峰のオススメ

高千穂峰
天孫降臨のもう1つの伝承地です。高千穂河原の登山口から鳥居をくぐって参道を歩くと、かつて霧島神宮があった古宮址が現れます。ここから頂上までは急斜面を登ったり、火口縁を歩いたりといった登山道。山頂にはニニギ神が突き立てたという天の逆鉾があり、坂本竜馬が新婚旅行で訪れたことでも有名です。
古宮址 天の逆鉾

霧島神宮
火山の噴火や火事に度々見舞われた霧島神宮は1715年に現在の地に再興されました。主祭神はニニギ神。ニニギ神は地上世界に稲をもたらしたとも言われており、2月の散籾祭(うちまきさい)や3月の御田植祭(おたうえさい)など、霧島神宮では稲にまつわる神事が今でも行われています。

鹿児島市内
霧島から少し足を伸ばせば鹿児島市内です。城山展望台から桜島を眺めたり、仙厳園の美しい庭園を散策したり。仙厳園は桜島の眺めも美しいですし、「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産にも指定されました。庭園内には鹿児島の伝統工芸品「薩摩切子」のギャラリー&ショップもあります。ガラスとは思えない美しさで、まさに芸術品。近くに工場もあって見学可能です。
仙厳園と桜島 仙厳園

アクセス

高千穂町へは熊本空港からレンタカーを借りるのが一般的だと思います。電車とバスを乗り継いでアクセスしたいという方は、こちらを参考にしてみて下さい。一方の高千穂峰は、最寄の空港が鹿児島空港となります。高千穂河原まで車で行き、そこから登山開始となります。両方を周遊される方はいずれかの空港を拠点にするといいでしょう。

旅のルート

私は2015年に車で両方を周遊しました。下のルートでは高千穂町で宿泊することを想定していますが、阿蘇も楽しみたいという方は阿蘇に宿をとり、そこを拠点にして高千穂峡にアクセスするというのも一案です。高千穂峰の方は近くに霧島温泉郷があるので、そこで宿泊するといいでしょう。私は霧島高原国民休養地でキャンプしたのですが、キャンプ場内に温泉があり、とても快適に過ごせました。

 日 移動 観光 宿泊
1 熊本空港→阿蘇→高千穂町(車) 阿蘇 高千穂町
2 高千穂町周遊(車) 高千穂峡
高千穂神社
槵觸神社
天岩戸神社
高千穂町
3 高千穂町→霧島温泉郷(車) 霧島温泉郷
4 高千穂河原、霧島神宮周遊(車) 高千穂峰登山
霧島神宮
霧島温泉郷
5 鹿児島市内周遊(車) 城山展望台
仙厳園
霧島温泉郷
6 霧島温泉郷→熊本空港(車)
熊本空港→(飛行機)